相撲の取組で「物言い」という場面を見たことがありますか?
相撲を見ていると、「あ~っ!これはどっちの力士が勝った??」っていう微妙な勝負の時がありますよね?
そういう時は、だいたい土俵下にいる審判から物言いというものがつけられて協議をするんですね!
物言いというのは、審判だけでなく力士がつけていいものなのでしょうか?
今回は、物言いの流れやルールについてのお話しをしていきますね!
相撲の物言いの流れとルールは?
出典:サンケイスポーツ
大相撲の取組の中で「物言い」というのは、行司が上げた軍配に対して、土俵下にいる5人の勝負審判が異議申し立てをすることができるというルールです!
行司は取組の勝負判定で、力士2人が同時に土俵を出ていたり、同時に土俵に落ちていると思った場合でも、必ずどちらかの力士に軍配を上げないといけないんです。
そのため、勝負判定が微妙な「同体」とみられる時は、審判から手が上がり物言いがつけられるのです。
物言いがつくと、5人の審判は土俵の上に上がり協議します。
目視と意見だけでは判断がつかない場合は、審判長がイヤホンでビデオ室からの映像確認の情報を聞きながら、協議を進め結論を出します。
「物言い」がついた後の審判の結論は、次の3つのどれかになります。
- 行司の軍配通り
- 行司の軍配差し違え
- 同体として取り直し
協議結果は、審判全員が土俵下に下がった後、正面土俵下の審判長から館内にマイクで説明を行うことになっています。
出典:デイリースポーツ
たとえば…
「ただいまの協議についてご説明致します。行司軍配は〇〇の投げを有利と見て〇〇に上がりましたが、〇〇の足が先に出ているのではないかと物言いがつき、協議にの結果、〇〇の足が先に出ており、行司差し違えで△△の勝ちと致します!」
みたいな感じですかね!
審判の中には、あまり説明がスムーズじゃない人もいて、
「え~…っ、ただいまの協議について、え~っと…、軍配は〇〇に上がりましたが、ん?あ、△△に上がりましたが、同体ではないかと物言いがつきましが、う~ん……、○○が…ん?あ~、△△が先に出ており、○○の勝ちとします」
みたいな……笑
「ちょっと~!どっちが勝ちなの?ハッキリしてよっっ!」と思わず突っ込みを入れてしまいたくなるような場内説明の時も。笑
そんな時は、土俵下で説明を聞きながら待っている力士も、
頭の中は「同体?取り直し?ん?負け?ん…勝ち?」って、協議結果のアナウンスに気持ちザワザワだそうです。笑
力士はその協議結果に従って、勝ち名乗りを受けたり、取り直しを行ったりするわけです!
相撲の物言いは力士もつけることができるの?
出典:サンケイスポーツ
取組に対する行司の軍配に異議がある場合は、力士も場合によっては「物言い」をつけることができます。
力士が「物言い」をつけられるのは、控え力士として土俵下に座っている時です。
日本相撲協会の公認相撲規則により
【控え力士】
- 第五条 「控え力士は、勝負判定に異議ある場合は物言いをつけることができる」
- 第六条 「控え力士は、勝負判定の協議に加わらず、従って決定権を持たない」
と定められているのです。
土俵下の力士が「物言い」をつけたら、それにより審判は土俵に上がり協議を行いますが、異議をした力士は土俵上での協議に参加することはできません。
従って決定権も与えられていないということですね。
平成29年11月場所の11日目、横綱・白鵬と嘉風との一戦で、立ち合い後に「待った」だと思った白鵬が力を抜き、嘉風に寄り切られ敗れ、軍配が嘉風に上がったことに対して、白鵬は「自ら手を上げて物言い」をつけたということがありました。
出典:毎日新聞
審判は取組は成立していると判断して軍配通りとなりましたが、判定に納得がいかない白鵬は、土俵下でも、土俵上でも約1分間に渡り異議の姿勢をとり続けました。
しかし、力士は自分の取組の判定に対して、異議を申し立てる権利は与えられていないので、この時の白鵬の行動は問題とされ、注意を受けることになったのです。
過去に控えの力士が物言いをつけた事例はあるの?
出典:スポーツニッポン
過去に土俵下の控え力士が物言いをつけた事例は4例あります。
相撲の歴史の長さを考えると、とても少ないですね。
ご紹介していきますね!
① 昭和13年1月場所 9日目
横綱・双葉山ー関脇・両国 戦
(物言いをつけた控えの力士:横綱・玉錦、横綱・男女ノ川の2人)
48連勝中だった双葉山が寄り切りで両国を破り行司軍配を受けるが、控えの玉錦と男女ノ川の2人の横綱が「双葉山に勇み足があった」と、すかさず物言いの手をあげました。
協議は揉めに揉めて長引き、男女ノ川は物言いを途中で取り下げましたが、玉錦は引かず、約1時間も協議の末、取り直しとなり双葉山が吊り出しで勝ち49連勝とした一番。
物言いのついた相撲は双葉山の右足が大きく踏み出していましたが、寄られた両国の体も完全に死に体だったという、同体取り直しの判断が妥当だったと言えるものでした。
物言いをつけた力士は土俵上での協議に加われませんが、当時は土俵下からかなり自分の見解を主張していたそうですよ。
この勝負判定によっては、双葉山の69連勝が無かったかもしれない歴史的な物言いの一番として伝えられています。
② 平成8年1月場所 9日目
小結・土佐ノ海ー前頭・貴闘力 戦
(物言いをつけた控えの力士:大関・貴ノ浪)
立ち合い当たり合った後、突き合いになり、貴闘力がいなしたり叩いたりしていたところに、土佐ノ海が頭を下げて突っ込んできて貴闘力が突き出されましたが、同時に貴闘力も叩きにいっており、土佐ノ海も右手から土俵に落ちました。
行司軍配は、土佐ノ海の突きを有利と見て土佐ノ海に上がりましたが、土俵下の控えにいた大関の貴ノ浪が手を上げて物言いをつけました。
協議の結果は、貴闘力の足が残っており、行司差し違えで貴闘力の勝ちとなりました!
③ 平成20年9月場所 8日目
序二段 笹山ー桑原 戦
(物言いをつけた控えの力士:序二段・星ヶ嶺)
十両以下の取組での控え力士の物言いの記録は、この1例だけです。
協議の結果、行司軍配通り笹山の勝ちとなりました。
土俵下の控えにいた星ヶ嶺は取組を見ていて、軍配が笹山に上がったのを見て「何で物言いがつかないんだろう」と思って、手を上げたそうです。
後に、手を上げるのは「かなりドキドキだった」と話していたそうです。
④ 平成26年5月場所 12日目
横綱・鶴竜ー関脇・豪栄道 戦
(物言いをつけた控えの力士:横綱・白鵬)
結びの一番、鶴竜と豪栄道は突き合う展開となり、動きの中で豪栄道が叩くと鶴竜が崩れ、豪栄道に軍配が上がりました。
しかし、土俵下の控えにいた白鵬がすかさず手を上げ、「豪栄道にマゲをつかむ反則があった」と物言いをつけました。
審判が協議の結果、豪栄道が鶴竜を叩いた際にマゲをつかんでいることが確認され、行司差し違えで鶴竜の反則勝ちとなりました。
白鵬は「マゲに手がかかったのが見えたが、誰も手を上げなかったから物言いをつけた」と話していました。
この一番は、横綱が反則で勝った史上初めての取組にもなりました!
まとめ
大相撲の取組での物言いの流れやルール、おわかりいただけたでしょうか?
土俵上の取組には審判だけでなく、控えの力士も物言いをつけてもいいという権利が与えられているのは面白いですよね!
でも実際のところ、これから自分の相撲が控えている力士にとっては、自分のことで頭がいっぱいで、なかなか土俵上での取組に異議を感じても物言いをつける感じにはならないのかな~と思ったりします。
力士にとっては、ひとつの白星がとてつもなく大事なものですから、際どい勝負だなと思った時は、どんどん物言いをつけて、力士も見ている人誰もが、納得できるような裁きをしてもらえたらいいなと思います!