先場所を途中休場し、初場所で再び進退のかかる横綱・稀勢の里が、1月6日、田子ノ浦部屋で出稽古に来た、同じ平成14年入門の幕内・琴奨菊と十両・豊ノ島と申し合い稽古を行い、3人で汗を流しました。
一門の垣根を超えた3人の顔合わせは異例で、どのような経緯でこの合同稽古は実現の運びとなったのでしょうか?
稀勢の里、琴奨菊と豊ノ島の3人で原点回帰の猛稽古!
琴奨菊と豊ノ島は高校卒業後、平成14年1月に、稀勢の里は中学卒業から同年3月にそれぞれ初土俵を踏みました。
ほぼ同期の3人は新十両も同じく平成16年という戦友!
新弟子が半年間通う相撲教習所に、3人は一緒に通い、当時から激しい出世争いを繰り広げていました。
相撲経験があり高校を卒業して入門してきた琴奨菊と豊ノ島に対し、稀勢の里は、「教習所の時は2人が圧倒していた。自分は歯が立たなかった」と話しました。
入門時から火花を散らしていたライバルは、平成16年5月には稀勢の里と豊ノ島が、一場所遅れて7月には琴奨菊が新十両に昇進しました!
稀勢の里は十両に上がってからの巡業での稽古が強く印象に残っている様子で、「十両に上がってから巡業の時は3人と片山を含めた4人で、毎日稽古をしていた。土俵を早く取りたいから朝5時半に行って、4人で必死にやっていたよ」と当時を振り返りました。
今回の合同稽古は、琴奨菊が「あの頃を思い出して一緒にやろうよ」と豊ノ島に話しを持ち掛け、豊ノ島が12月の内に稀勢の里に声を掛け、「是非やろう」ということになり実現したもの。
12月の時点で稀勢の里は、この合同稽古をとても楽しみにしている様子でした。
稽古は報道陣に非公開で行われたので、当人たちによると、稀勢の里は全部で18番取ったということでした。
琴奨菊は「横綱に勝ったのは2、3番」
豊ノ島は「横綱とは7番取って全敗」と明かしました。
勝敗結果は番付通りという感じでしたが、勝敗以上に稀勢の里が味わった手応えは大きかったようで、
「(十両当時も)必死だったけど(3人とも)今の方が必死だったかも。昔を思い出しながらね。楽しかった。久しぶりにそう思った」
と、充実した表情で語っていました。
琴奨菊も「強いよ、横綱は。ただ一度振り返るのも大事だと思った。(稽古が)実現できたのは大きい。若手との稽古も大事だけど、自分が絶対に負けたくないと思える相手とやることで、プラスアルファで得るものがある」と、相撲だけでは無く気持ちの充実を語りました。
豊ノ島は足の怪我で幕下まで落ちていたため、本場所での2人との対戦は約3年も遠ざかっていましたが、「稽古したのもめちゃくちゃ久しぶり。雰囲気も良かったし、懐かしい感じがした。いい刺激になった」と幕内復帰し、再び本場所で2人と対戦することを見据えたいい時間になった様子でした。
稀勢の里は、「若手との稽古ももちろん大事ですけど、最近若い力士は力を稽古場でちゃんと出してくれない人が多い。だから2人が全力で力を出してくれたことは嬉しかった」と、今の若手の稽古にちょっぴり苦言も呈していました。
横綱として進退のかかる場所となる稀勢の里。
再び幕内上位に番付を戻し、三役復帰に燃える琴奨菊。
怪我から復帰し十両で勝ち越し、再び幕内を目指す豊ノ島。
今、3人がおかれている立場はそれぞれですが、過去に共に切磋琢磨ししのぎを削って来た時間は、3人にとっては共通な宝物だと思うのです。
前に向かって進むときに、一度自分の過去を振り返り原点回帰するために3人は、この合同稽古をしようと思ったのでしょう。
3人で必死に体をぶつけ合った時、理屈では無い何かが体の中を流れることを感じ取れたのではないでしょうか。
3人それぞれが自分のために、そして相手のために、若い時代につながった絆で汗を流した、いい申し合い稽古だったと思います。
写真は稽古後の3人。充実した晴れやかな表情がいいですね!